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生成AIと資料のデータ

生成AIに資料を学習させないために、
確認すべき3つのこと

チャットAIの「学習に使わない」設定は済ませた。それでも、資料作成ツールに顧客の資料を上げるのは不安が残る。その不安は正しく、確認する場所は別にあります。

この記事の結論

  1. チャットAIのオプトアウト設定が効くのは、そのチャットサービスの中だけです。資料作成ツールに資料を預けたとき、学習に使われるかどうかは別のところで決まります
  2. 決めるのは、ツールがどの経路でAIに資料を渡しているかと、ツールの規約・プライバシーポリシーに何が書いてあるかです
  3. 確認すべきは3点です。①資料がどの事業者に、どの経路で渡るか ②規約のどの条文に、学習利用・保持期間・委託先が書かれているか ③プランや料金によって扱いが変わらないか

顧客の決算資料、社内の検討メモ、まだ公表していない事業計画。こうした資料を土台に提案書や報告書をつくる仕事では、生成AIを使うかどうか以前に「預けた資料がAIの学習に使われないか」が気になるはずです。

検索すると、ChatGPTやGeminiの設定画面でオプトアウトする手順を紹介した記事がたくさん出てきます。その手順自体は正しく、チャットAIを直接使う人には必要な設定です。ただし、資料作成ツールに資料をアップロードする場合、その設定だけでは答えになりません。資料が通る道が、チャット画面とは違うからです。

この記事では、資料作成ツールに資料を預けるときに何をどの順番で確認すればよいかを、AI事業者の一次情報(利用規約・データ利用ポリシー)に沿って整理します。各社の記述は2026年9月末時点で公式ページを開いて確認したものです。規約は改定されるため、実際に判断するときは出典のリンク先で最新の内容を確かめてください。

1. チャットの設定だけでは足りない理由

チャットAIの学習設定は、あなたのアカウントと、そのチャットサービスの間の約束です。ChatGPTの設定でオフにしたものは、ChatGPTでのあなたの会話に効きます。Claudeの設定はClaudeでの会話に、Geminiの設定はGeminiアプリでの会話に効きます。それ以上の範囲には届きません。

資料作成ツールを使うとき、資料はあなたのチャット画面を通りません。ツールの運営会社が、自社のサーバで資料を受け取り、運営会社自身が契約しているAI事業者のアカウントを使って、AIに処理を依頼します。ここで効くのは、あなたのチャット設定ではなく、次の2つです。

  • ツールの運営会社とあなたの間の約束(ツールの利用規約・プライバシーポリシー)
  • ツールの運営会社とAI事業者の間の約束(AI事業者の事業者向け規約と、運営会社側の設定)

つまり、ChatGPTで学習をオフにしていても、ツールが別の事業者のAIを使っていればその設定は関係がありません。逆に、同じ事業者のAIを使っていても、あなたの個人アカウントの設定がツール経由の処理に引き継がれるわけではありません。

図1:チャットの学習設定が守るのはチャットの中だけ。ツール経由の資料は、ツールの規約と契約で決まる
経路A:チャットAIに直接貼る あなた チャットサービス (消費者向け) ここはチャットの学習設定が効く 経路B:資料作成ツールに上げる あなた ツールの 運営会社 AI事業者の API ツールの規約と、運営会社の契約で決まる あなたのチャット設定はここに届かない
経路Bでは、あなたの個人アカウントの設定ではなく、ツールの運営会社が使っている契約の種類(事業者向けAPIかどうか)と、その運営会社の規約が扱いを決めます。

2. 仕組み ― 消費者向けチャットと事業者向けAPIは扱いが違う

主要なAI事業者は、個人が使う消費者向けチャットと、事業者が自社サービスに組み込むAPIで、入力データの扱いを分けています。消費者向けチャットは、設定次第で会話が学習に使われることがあり、利用者が設定画面で選べるようになっています。一方の事業者向けAPIは、入力を既定でモデルの学習に使わないことを規約や公式ドキュメントに明記しています。

OpenAI・Anthropic・Googleの3社について、2026年9月末時点の公式ページで確認できた内容を表にまとめます。

事業者消費者向けチャット事業者向けAPI
OpenAIChatGPTの設定(Data controls)にある「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われない[1]APIに送られたデータは、利用者が明示的にオプトインしない限り、モデルの学習・改善に使わない。不正利用監視のログは既定で最大30日保持[2]
AnthropicClaude Free/Pro/Maxでは、プライバシー設定でモデル改善への利用を許可している場合に会話が学習に使われる。オフにすると新しいチャットは学習に使われない[3][4]商用利用規約に「顧客コンテンツでモデルを学習しない」旨を明記。APIを含む商用製品の入出力は既定で学習に使わない[5][6]
GoogleGeminiアプリは、アクティビティの保存がオンの場合、人によるレビューを含めて生成AIモデルのトレーニングなどに利用。オフでも今後のチャットは72時間保存される[7]Gemini APIの有料サービスでは、プロンプトや応答を製品の改善に使わない。無料サービスでは、製品や機械学習技術の改善・開発に使う[8]

2026年9月末時点で各社の公式ページを開いて確認した内容の要約です。原文の表現・例外条件(安全上の理由でのレビュー、フィードバック送信時の扱いなど)は出典のリンク先で確認してください。

この表から読み取れることは2つです。

1つ目は、資料作成ツールがAIを事業者向けAPI経由で使っているなら、少なくともAI事業者の規約上は、既定で学習に使われない側に入るということです。ツールの運営会社が消費者向けチャットの画面を裏で操作していることは通常なく、APIで接続しているのが一般的です。ただし、それを確かめるのが次章の確認ポイント1です。

2つ目は、同じAPIでも条件によって扱いが変わる例があるということです。上の表のとおり、Gemini APIは有料サービスと無料サービスで扱いが分かれています。ツールがどの条件でAPIを使っているかは、利用者からは見えません。これが確認ポイント3につながります。

「学習に使わない」と「保存しない」は別の話です。事業者向けAPIでも、不正利用の監視などを目的に一定期間ログを保持する旨が書かれていることがあります(例:OpenAIのAPIは既定で最大30日[2])。機密性を判断するときは、学習の有無と保持期間を分けて確認してください。

3. 確認ポイント1 ― 資料はどの経路でAIに渡るか

最初に確認するのは、あなたの資料が、どのAI事業者に、どんな用途で送られるかです。ここが分からないと、前章の表のどの行を見ればよいかも決まりません。

見る場所は、ツールのプライバシーポリシーにある「業務委託先」「第三者提供」「外部サービスの利用」といった条項です。まともな運営会社であれば、利用しているクラウドサービスやAI事業者の名前と、そこに何を渡しているかが列挙されています。

このとき注意したいのが、送り先が1社とは限らないことです。資料作成ツールは、文章やスライドを生成するAIのほかに、アップロードした資料を検索できるように細かく分けて数値に変換する処理(埋め込み・ベクトル化と呼ばれます)や、画像から文字を読み取る処理などに、別の事業者のAPIを使っていることがあります。生成用のAIが「学習に使わない」規約でも、別の用途の送り先が同じ扱いとは限りません。

実際、埋め込み専用のAPIを提供する事業者のなかには、APIの利用であっても既定では顧客データを保存して将来のモデル学習に使い、事業者側の管理画面で運営会社がオプトアウトする仕組みをとっているところがあります[9]。この場合、学習に使われないかどうかは、規約だけでなく運営会社がその設定を済ませているかで決まります。

図2:「学習に使わない」が守るのはAPIの先の一部だけ。ツール側の保存と送り先の数は別に確認する
1 あなたの資料(入力) 2 資料作成ツールの運営会社 受け取った資料の保存・処理 保存期間・削除 = ツールの規約で決まる 3 AI事業者のAPIへ送信 生成用のAI 検索用の ベクトル化など 4 AI事業者側での扱い 事業者向けAPIは既定で学習に使わない ただし一定期間のログ保持はありうる 事業者によってはオプトアウト手続きが要る
「学習に使わない」が直接答えているのは4の一部です。2の保存と、3の送り先がいくつあるかは、ツールのプライバシーポリシーで別に確認します。

4. 確認ポイント2 ― 規約のどの条文を読むか

送り先が分かったら、次はツール自身の規約とプライバシーポリシーで、3つの記述を探します。学習利用の有無、保持期間と削除、第三者への提供(委託先)です。

学習利用の有無 ―「学習」だけでなく「改善」も探す

学習利用は、必ずしも「学習」という言葉で書かれているとは限りません。「サービスの品質向上のため」「機能の改善・開発のため」「統計的な分析」といった利用目的の書き方の中に含まれていることがあります。読むときは、ツールの運営会社自身があなたの資料を何に使うかと、外部のAI事業者があなたの資料を何に使うかを分けて確認してください。前者は利用目的の条項に、後者は外部送信や委託先の条項に書かれていることが多いです。

「利用しない」と明記されている場合も、例外条件が付いていないかを見ます。たとえば、利用者が評価ボタンやフィードバックで送った内容は扱いが違う、といった例外は、AI事業者の規約にもよく見られます[6]。

保持期間と削除

学習に使われなくても、資料がどこかに保存され続けるなら、それは別のリスクです。ツールの規約で、アップロードした資料や生成物がいつまで保存されるか、退会したときに削除されるか、自分で削除できるかを確認します。期間が数字で書かれていないことも多いので、その場合は「利用目的の達成に必要な期間」といった表現になっていないか、削除の申し出の方法が書かれているかを見ます。

第三者提供・委託先・国外移転

確認ポイント1で見た委託先の一覧に加えて、その事業者がどの国にあるかも確認します。日本の個人情報保護法では、外国にある第三者に個人データを提供する場合の扱いが定められており、多くのツールのプライバシーポリシーには「外国にある第三者への提供」に関する条項があります。顧客との秘密保持契約で、データの保管場所や再委託に条件が付いている場合は、この条項と照らし合わせる必要があります。

規約の中に目当ての記述が見つからないからといって、「学習に使っていない」「保存していない」とは限りません。記載がない、あるいは読んでも判断できない場合は、運営会社の問い合わせ窓口に書面(メール)で質問し、回答を残しておくのが確実です。

5. 確認ポイント3 ― プランや料金で扱いが変わらないか

最後に、データの扱いがプランによって変わらないかを確認します。生成AIを使ったサービスでは、「入力データを学習に使わない」扱いを上位プランや法人プランに限る設計もありえます。無料プランで試しているときの扱いと、有料プランに切り替えた後の扱いが同じとは限りません。

これはツールの運営会社の方針だけでなく、裏側のAI事業者の条件からも起こりえます。第2章で見たとおり、Gemini APIは有料サービスと無料サービスで、入力データを製品の改善に使うかどうかが分かれています[8]。ツールがどの条件のAPIを使っているかは利用者から見えないため、ツールの規約やFAQに、プランによる違いが書かれていないかを確認します。

確認する場所は、料金ページの比較表、FAQ、プライバシーポリシーの3か所です。料金ページに「データを学習に使用しない」が上位プランの特典として並んでいたら、下位プランでは学習に使われる可能性があると読むのが自然です。逆に、全プラン共通である旨がプライバシーポリシーに書かれていれば、試用の段階から同じ条件で判断できます。

6. 資料作成AIツールを選ぶときのチェックリスト

ここまでの3つの確認ポイントを、ツールを比べるときに使える形にまとめます。上から順に確認すれば、規約をどこから読めばよいか迷わずに済みます。

#確認すること見る場所見るべき記述
1資料の送り先プライバシーポリシーの委託先・外部送信の条項AI事業者の名前と用途(生成用か、検索用のベクトル化などか)。送り先が複数ないか
2接続の種類プライバシーポリシー、FAQ、セキュリティのページ事業者向けAPI経由で処理している旨。送り先ごとの学習の扱い
3学習利用の有無利用目的の条項、外部送信の条項「学習」「改善」「品質向上」の記述と、その例外条件
4保持期間と削除保管期間・削除の条項保存される期間、退会時の削除、自分で削除できるか
5プランによる差料金ページ、FAQ、プライバシーポリシー学習に使わない扱いが特定のプラン限定になっていないか
6所在国と再委託外国にある第三者への提供の条項送り先の国。顧客との秘密保持契約の条件と矛盾しないか

記載が見つからない項目は「なし」と判断せず、運営会社に問い合わせて回答を残してください。

もう1つ、ツールの規約とは別に、あなたと顧客の間の約束も確認してください。秘密保持契約で、外部のクラウドサービスへの入力や再委託が制限されていることがあります。その場合は、ツールの規約がどれだけ整っていても、顧客の了解を得るか、固有名詞や数値を伏せた状態で使うといった運用が必要です。

7. Rontenの場合

この記事を公開しているRontenも、資料をアップロードして提案書や報告書をつくる資料作成ツールです。上のチェックリストに沿って、2026年9月末時点の扱いを書いておきます。詳細と正式な記載はプライバシーポリシーを確認してください。

  • 生成の経路:スライドの生成・編集・評価は、Rontenのサーバから生成AIの提供事業者(Anthropic)の事業者向けAPIを呼び出して処理しています。チャット画面を経由することはありません。Anthropicの商用利用規約では、APIに送られた顧客コンテンツをモデルの学習に使わない旨が定められています[5]
  • 検索用の経路:アップロードした資料の検索(ベクトル化)には、Voyage AIのAPIを使っています(プライバシーポリシー第4条)。Voyage AIには、送信データを保存せず、モデルの学習にも使わないオプトアウトの仕組みがあり、Rontenは組織設定でオプトアウト済みです(2026年9月30日実施・ゼロ日保持)。つまり検索用の経路でも、資料が学習に使われることはありません
  • プランによる差:生成に使うAPIと、その学習に関する扱いは、無料プランを含む全プランで共通です。プランによって変わるのは作成できる枚数や登録できる資料の数で、データの扱いではありません
  • 保存と削除:アップロードした資料と生成したスライドは、サービスの提供に必要な期間保存し、アカウントの削除を希望された場合は、法令上保存が必要な情報を除いて削除します(プライバシーポリシー第6条)
  • 委託先と所在国:利用しているクラウドサービスと所在国は、プライバシーポリシー第4条・第5条に一覧で載せています

あわせて、Rontenのプライバシーポリシーでは、機微な情報や第三者の秘密情報の入力を控えていただくようお願いしています。学習に使われないことと、外部の事業者に送信されないことは別の話だからです。顧客の資料を使う場合は、前章のとおり秘密保持契約の条件を確認し、必要に応じて固有名詞や数値を伏せたうえでお使いください。

Rontenでどんな資料がつくれるかは、製品のトップページで見られます。

8. まとめ

冒頭の結論に戻ります。チャットAIのオプトアウト設定は必要ですが、それが守るのはチャットの中だけでした。資料作成ツールに資料を預けるときは、ツールの側を確認します。

この記事の要点

① 資料の渡り方を確かめる ― ツールはあなたのチャット設定ではなく、運営会社の契約でAIを使います。プライバシーポリシーの委託先を見て、送り先の事業者と用途を確認します。送り先は生成用の1社とは限りません。

② 規約の3つの記述を読む ― 学習利用の有無(「改善」「品質向上」の書き方も含む)、保持期間と削除、委託先と所在国。見つからなければ問い合わせて回答を残します。

③ プランによる差を確認する ― 学習に使わない扱いが上位プラン限定になっていないか。裏側のAPIでも有料と無料で扱いが分かれる例があります。

出典(2026年9月30日に閲覧)
  1. OpenAI Help Center「Data controls in ChatGPT」 https://help.openai.com/en/articles/7730893-data-controls-in-chatgpt
  2. OpenAI API ドキュメント「Your data」 https://developers.openai.com/api/docs/guides/your-data
  3. Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(消費者向け製品) https://privacy.claude.com/en/articles/10023580-is-my-data-used-for-model-training
  4. Anthropic Privacy Center「How do I change my model improvement privacy settings?」 https://privacy.claude.com/en/articles/12109829-how-do-i-change-my-model-improvement-privacy-settings
  5. Anthropic「Commercial Terms of Service」(2025年6月17日発効) https://www.anthropic.com/legal/commercial-terms
  6. Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(商用製品) https://privacy.claude.com/en/articles/7996868-is-my-data-used-for-model-training
  7. Google「Gemini アプリのプライバシー ハブ」 https://support.google.com/gemini/answer/13594961?hl=ja
  8. Google「Gemini API 追加利用規約」(最終更新 2026年4月28日) https://ai.google.dev/gemini-api/terms
  9. Voyage AI「FAQ」(顧客データの保護に関する項目) https://docs.voyageai.com/docs/faq/同「Privacy Policy」(既定の学習利用と、オプトアウト後は処理後即時削除の明記) https://www.voyageai.com/privacy
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